人間関係

生きやすくなるには見方を変えよう|アドラー 心理学

悩む女性

自ら生きにくさを抱え、周囲に対しても摩擦を生じている人がかなりいると思います。

そういった人からの相談を聴き、より良い方向に向かわせるのがアドラー心理学だと思います。

今回はこの生きにくさを抱えた人たちが、なぜこのように生きにくくなってしまうのかについて説明をしていきたいと思います。

ライフタスクとライフスタイル(アドラー心理学)

ライフタスク

私たちの日々の生活の中では、朝から晩まで様々な課題に直面します。

身近な例をあげれば、通勤電車に乗って会社の始業時間までに出勤することや、上司の命令や指示を受けたり、お客様からクレームがきたり、部下が不始末をした場合には尻拭いをするというようなことです。
また、職場の人たちには挨拶しますし、職場の人同士で食事に行ったり、飲みに行ったり、近所の身近な人たちとの様々なお付き合いをすることもあります。
さらに、家に帰ったら、子供と遊んだり、子供の勉強をみてあげたり、夫婦間で親密な時間を過ごすということもそうです。

このように私たちは生きていく中で、生活の様々な場面に出会い、そこで自分なりの対応を求められます。またこの時に、人間関係を切り離すことはできません。

これをアドラー心理学ではライフタスクというのですが、このライフタスクは3つに分類されています

  1. 仕事(ワーク)のタスク
    役割・義務・責任が問われる生産活動への取り組み
  2. 交友(フレンドシップ)のタスク
    身近な他者との付き合い
  3. 愛(ラブ)のタスク
    カップルを基本とし、親子も含めた家族の関係

私たちの生活をまず3つに分けて、それぞれの面から人がどのように対応しているかを考えようということです。

ライフスタイル

このライフタスクに対応するときに、人の心の中で動いているのがライフスタイルです。
ライフスタイルとは、その人特有のものの考え方(思考)、喜怒哀楽(感情)、思考と感情をもとに起こした行動の特性全てを総合したもので、性格よりももっと広い意味を持ち、「自分についての信念」「自分の周りの世界に対する信念」をも含む、アドラー心理学の用語です。

ライフスタイルは次のように分解されます。

  1. 「自己の現状の信念」
    自分で自分の今の状態をどうみているのか、自分の身体・性格・能力などを自分自身が主観的にどうみなしているか
  2. 「自己の理想の信念」
    自分は優れていたい、完璧でありたい、失敗してはならない、周囲の人たちから注目を得たい、好かれたいなどといった「自分がどうありたいか、どうあるべきか」に対して自分が持っている考え
  3. 「世界の現状の信念」
    世界といっても自分の周囲の環境のことで、世界・人生・運命・人々といった広いことから、男・女・家族・仲間・上司・部下などの身近な部分までも含んだ世界のことで、これらの現状を自分自身が主観的にどうみなしているか
  4. 「世界の理想の信念」
    先にも述べた、世界・人生・運命・人々といった広いことから、男・女・家族・仲間・上司・部下などの身近な部分までも含んだ世界の存在が、自分に対してどうあって欲しいか

アドラー心理学では、
1の「自己の現状の信念」を「自己概念」と言います。
2の「世界の現状の信念」を「世界像」と言います。
3の「自己の理想の信念」と4の「世界の理想の信念」を合わせて自己理想と言います。

そして、「ライフスタイルとは、自己と世界の現状と理想についての信念の体系である」と定義しています。

「自己概念」をわかりやすく説明するための例として、発明王エジソンがあげられます。
エジソンは「自分は失敗しやすい」という自己概念を持ってなかったはずです。
もしエジソンが「私は失敗しやすい」という自己概念を持っていたら、数回の失敗で諦めてしまい、発明王にはならなかったはずです。
エジソンが「天才とは1%のひらめきと99%の汗である」という言葉を残していることからもそのことがわかると思います。

別の例では、「自分はダメな人間だ」という「自己概念」を持っていると、どんなに周囲の人が能力を認めたとしても自分自身が「こんな自分では、まだまだダメだ」と自分を卑下してしまいます。
「世界像」が「部下は信頼できない」だとすると、部下を頼りにすることなく、なんでも自分でやるようになり、部下と協力して仕事を達成することは困難になります。
「自己理想」が「ライバルに追いつき追い越すことだ」とすると、競争にばかり目がいってしまい、ライバルと良い関係を構築するのが難しくなります。

ライフスタイルはいざという時に自分の頼りになる辞書や地図のようなものです。
困難なライフタスクに出会うと、意識に浮かんできて自分の判断基準になります。

原因を探すのではなく目的に向かって進む

自ら生きにくさを抱え、周囲に対しても摩擦を生じている人がいます。

そういった人は自己肯定感が低く、周囲の人を信頼していません、こういうタイプの人の特徴の一つは原因探しで物事をとらえがちになりやすく、変えられない過去に問題の根源を求めていることにあります。さらにそのことが現在までずっと自分に影響を与えていると思い込み、大事な何かがうまくいかない場合には、自分自身を環境の被害者・犠牲者のようにみなして、自分自身で勇気をくじいいてしまうのです。
それだけでなく、人によってはこの同じアプローチを他の人にも使うので、他者との摩擦を引き起こしてしまうのです。

原因を探っても解決にはつながらない

アドラー心理学では、「人間の行動には、その人特有の意思を伴った目的がある(未来志向)」という立場を取っています。
原因を探っても、過去にさかのぼってやり直すことは不可能です。
それよりは今から未来にかけて解決可能なことを模索して言った方が賢明なやり方です。
つまり未来への目標が現在を規定するという未来志向の目的論を採用すれば、否定的な出来事に対しても、過去の原因が現在を支配的してしまう過去志向の原因論のような被害者意識、犠牲者意識が生まれません。
そしてアドラー心理学の目的でもある、勇気づけの効果が出てきます。

アドラー心理学の認知論

「人間は、自分流の主観的な意味づけを通して物事を把握する」というのがアドラー心理学の理論、「認知論」という考えです。
人が事実をありのままに物事を客観的に把握することは不可能という立場をとっています。

人は「自分流の主観的な意味づけ」をします。
自分自身や世界に対するその人特有のものの見方・考え方・価値観のことをアドラー心理学では「私的論理(プライベートロジック)」と呼びます。
私的論理とは、その人特有のメガネカメラのレンズのフィルターのようなもので、誰でも程度の差はありますが歪んだものの見方をしていると考えています。
私的論理の例えとしては、ネガティブあるいはポジティブといったことがあげられます。

ベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)

私的論理の中で、非建設的(時には破壊的)に働き、自分自身も生きにくく、周囲との摩擦を生じてしまいがちな歪んだ意味づけを伴う思考、自滅的な認知をすることを「ベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)」と言います。
人は皆、ピンチに陥った時、「ベイシック・ミステイクス」に支配されがちになるのです。
ベイシック・ミステイクスの代表的なものとして、「決めつけ」「誇張」「見落とし」「過度の一般化」「誤った価値観」の5つがあげられます

    1. 「決めつけ」
      可能性にしか過ぎないものをレッテル張りして、断定してしまうようなことです。
    2. 「誇張」
      5のものをまるで10か100のように大げさにとらえてしまうことです。
    3. 「見落とし」
      ある部分だけばかり見てしまい、そのほかの大事な側面を見ないでいることです。
    4. 「過度の一般化」
      ある領域だけが問題であるのに、ほかの領域も全て問題視してしまうことです。
    5. 「誤った価値感」
      自滅的・破壊的な価値観でとらえてしまうことです。

ベイシック・ミステイクスに陥ってしまった時には

歪んだ意味づけを伴う思考から、自分自身と他者にとって健全かつ建設的で、現実に即した意味づけのパターンへと導いていくことが必要となります。

「ベイシック・ミステイクス」を脱却するには(1)証拠探し(2)その瞬間を捕らえる(3)ユースフル(建設的)発想の3つを取ることが良いようです。

「証拠探し」で、自分がある考えに縛られてしまった時に、本当にそうなの?と自問して、みんながみんなそのように考えるのかその証拠を探してみて、自分が決めつけていることに思い至ります。
次に、「その瞬間を捕らえる」で、ベイシック・ミステイクスで悩んでいる時にはいつも必ず出てくるパターンが2つから3つまとめて出てくることがあるので、その瞬間を「あっ、やっちゃってるな!」と捕らえる、気がつくことです。
これを危険ゾーンに入りそうな一歩手前で食い止めることです。
それを進めながら、「ユースフル(建設的)発想」を使って、破壊的・自滅的な方向に進まないように自分の舵を切り直すことです。

アドラー心理学の自己決定性

自分が全ての判断軸を持っている

「人間は、環境や過去の出来事の犠牲者ではなく自ら運命を創造する力がある」というのが、アドラー心理学の理論、「自己決定性」という考えです。

「あなたをつくったのはあなた。あなたを変えうるのもあなた」とアドラーは言っています。
人の性格の形成においては、遺伝などの身体的面も環境的面も影響がありますが、最終的にその人の性格を決める要因は、その人自身なのです。

自己決定性はあらゆる局面で自分自身に影響を与え続けます。
私的論理にこだわり続けて不自由な考え方・生き方から抜け出せないで非建設的な対応をするのも、建設的な対応に向かうのも全てあなた次第です。

そして建設的な対応を選ぶか非建設的な対応を選ぶかの判断する指針を判断軸とよびます。

つまり判断軸は全て自分自身が持っているのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
アドラー心理学では「人間は、環境や過去の出来事の犠牲者ではなく自ら運命を創造する力がある」と言っています。
また「建設的な対応を選ぶか非建設的な対応を選ぶかの判断軸は全て自分自身が持っている」とも言っています。
「あなたをつくったのはあなた。あなたを変えうるのもあなた」なのです。

アドラー心理学は「あなたの人生を変える勇気づけの心理学」です。
勇気とは、困難を克服する活力のことです。

勇気を持って自分の人生を進んでいきたいですね。




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