人間関係

安心できる良い人間関係を築く|アドラー 心理学

握手をする二人
人はたった一人では生きていくことができません。

私たちは、社会をつくり組織の中で他者と共に生きているからです。
ですから、他者と結びついて生きていることを忘れないように、日々心がけていくことが大事だと思います。
利己的になり他者を敵対視すれば争いになります。
穏やかで安心できる生活を送るようにするためには、安心できる良い人間関係を築く必要があります。

アドラー心理学を初めて学んでみると、安心できる良い人間関係をつくるためにはどうしたら良いのかがわかります。

今回は、人間関係の築き方についてのエッセンスを書いていこうと思います。

アドラー心理学から学ぶ|人間関係における理性と感情の関係とは?

「人は心の中が矛盾対立する生き物ではなく、一人ひとりかけがえのない、分割不能な存在である」
アドラー心理学ではこのように言っています。
これはアドラー心理学の「全体論」という理論です。
心の中にある理性と感情は一見すると矛盾した方向をたどっているように思われますが実際はそうではありません。

感情と理性はお互いに補い合い、協力する

感情と理性はお互いに補い合い協力する関係です。
まず感情の役割について説明します。
感情は次のように2つに分けられます

  1. 感情は身体・思考・行動と密接に関連している
  2. 感情は「非理性的回路」を分担し、思考は「理性的回路」を分担している

では、それぞれを説明していきましょう。

1.感情は、身体・思考・行動と密接に関連している

感情と身体との関連については、例として、よく眠った後の爽快感や、風邪を引いた時の倦怠感があげられます。体調によって出てくる感情に違いが出てきます。

感情と思考の関連については、「怒り」という感情が例にしてみるとわかります。
待合わせに遅れてきた友人にムッとした場合がそうです。
ムッとした理由の根底には「約束した時間は守るべき」という「・・・すべき」「・・・しなければならない」という思考や信念があるからです。

感情と行動の関連については、やらないといけないことを先延ばししていると、いよいよ期日が迫ってくるという段階で焦りの感情が出てきます。

2.感情は「非理性的回路」を分担し、思考は「理性的回路」を分担している

人は、多くの行動を考えてから行動に移すように、「理性的回路」を通して行なっています。
しかし、「理性的回路」は行動に移るまでに停滞気味になりやすいのです。
そういった時に、思考・認知の領域から指令が出て、感情・感覚から「非理性的回路」を通って一気に行動してしまうことがあります。
言うことを聞かない子供を怒りに任せて叩いてしまった、とか、ひどい悪口を言われたので、とっさに物を投げつけた、などという場合ですね。

感情の中で厄介な怒り

先ほどの例でもあげましたが、「怒り」という感情が一番厄介です。
怒りの感情が出るのには、

  1. 支配
  2. 主導権争いで優位に立つこと
  3. 権利擁護
  4. 正義感の発動

という次の4つの目的があるからです。

なぜ怒りが出るのか?

この怒りがでる根底には人には「・・・であるべき」「・・・しなけらばならない」という思考や信念があるからです。
その人の思考や信念に沿わない出来事が起こった時、人は「傷つき」「寂しさ」「悲しみ」「心配」「落胆」といった最初の感情(一次感情)が生まれます。
この一次感情が「怒り」に変換されて感情が出てしまうのです。

ここで怒りを相手にぶつけたらどうなるでしょうか?
相手が反発して、怒りをぶつけ返してくることもあるでしょう。
もちろん人間関係はうまくいきません。

でも、最初に出てきた一次感情を相手にきちんと話したら、このようなことにはならないかもしれません。
日常で「怒り」が出てきた時には、なぜ怒りが出てきたのか、その根底にある一次感情に気づかないといけません。

アドラー心理学から学ぶ|ライフスタイルはどうやって決まるのか?

ライフスタイルとは?

ライフスタイルとは、アドラー心理学では次のことを言います。
その人特有のものの考え方である「思考」、喜怒哀楽に代表される「感情」、思考・感情をもとにした行動の特性、「自分についての信念」「自分の周りの世界に対する信念」を総合したものです。

わかりやすく言えば「性格」のことですね。

ライフスタイルはどのように形成される?

アドラー心理学では、ライフスタイルは影響を与える要因と決定する要因とがあり、次のように説明しています。

1影響を与える要因
  1. 身体的要因
    1. 気質の遺伝
    2. 器官の劣等性
  2. 環境
    1. 家族の配置図
      • きょうだい
      • 誕生順位
      • 競合関係
      • 家族の中で共有している価値
      • 家族の雰囲気
    2. 文化
      所属している共同体特有の価値観とそれに基づいた行動パターン
2決定する要因
  • 本人が自己決定する
    影響を与える要因をもとになって、様々な試行錯誤を繰り返していく中で、本人が決定し維持・固定する。

アドラー心理学では、人のライフスタイルが固まる年齢は8〜10歳ぐらいとみています

きょうだいの誕生順位でわかる性格のおおよその傾向とは?

人間関係においては、相手の性格の傾向を知って、それに合わせて対応することで人間関係をスムーズに保つことができます。

アドラー心理学では「きょうだいの誕生順位」で性格の傾向を次のように説明しています。
「きょうだいの誕生順位」でわかる性格の傾向に関する本は、最近よく書店で見かけられ、話題になっていますね。

第一子:「1番に生まれ、1番に居続けたいと思う」

  • よく注目の中心になろうとする
  • 他の子供より優越の地位でなければと思う
  • 親と同じように支配的になる傾向がある
  • 失敗を嫌い失敗するぐらいなら行動をしないことを選ぶ
  • 能力を育てたり責任ある行動をとったりする
  • 下のきょうだいを助けたり、守ったりする
  • 周囲の期待に応えて喜ばせようとすることがある
  • 安定感があり順応性がある
  • プライドが高い
  • メンツを気にする
  • 自分の地位位を脅かす存在がいると嫉妬深くなる

第二子:「追いつくために必死になって走る」

  • 親や周囲からあまり注目を浴びない
  • いつも自分より有利なきょうだいがライバルとして存在する
  • 第一子に追いつき追い越そうとする
  • 第一子が「良い子」だと「悪い子」を演じる。逆に「悪い子」の第一子には「良い子」を演じる
  • 第一子が持っていない能力を発揮しようとする
  • 第一子が成功すると自分の能力について不確かさを感じる
  • 下にきょうだいが生まれると圧迫されたと感じる
  • 他のきょうだいの足を引っ張ろうとする

中間子:「一生、人をかき分けて行く傾向がある」

  • 上・下のきょうだいのようなメリットを持たない
  • 不公平だと感じることが多い。ひがみっぽくなることもある
  • 親から愛されずに冷たくされていると感じる
  • きょうだい間で身動きがとれず、はさみうち状態である
  • 家族の中ではっきりした居場所がないと感じる
  • 勇気をくじかれて「問題児」になるか、自分を高める代わりにきょうだいを押しのけようとする
  • 上・下のきょうだい間のやり取りに長けているので適応力がある

末っ子:赤ちゃんとして生まれ、王座を奪われることがない」

  • 一人っ子のような行動をすることがある。誰もが自分より能力があると感じる
  • 上の人がすることをあてにして、決断したり責任を負うことを他人任せにする
  • 一番小さくて弱いと感じている。深刻に受け取らない
  • 他者からサービスを受け、自分流にやることで家族のボスになる
  • 劣等感を育て、上のきょうだいを脅かす行動に走ることがある
  • 赤ん坊の役割を演じ他者からのサービスをあてにする
  • 3人きょうだいだと第一子と同盟を結び、中間子を「共通の敵」とする

一人っ子:「巨人の世界の小人」

  • 甘えん坊で寂しがり屋である
  • 注目の中心になってそのポジションに味をしめる。特別だと感じる
  • 過保護に甘やかされがちになる
  • マイペースである
  • したいことをするのが楽しみである
  • 理想が高い
  • 同じ年齢の子供との関係は苦手だが、年下や年長者は得意である
  • 責任感が強い
  • 第一子のような努力するタイプと末子のような依存型のタイプのどちらかに分かれる傾向がある

このように、相手がきょうだいの中でどのような誕生順位で育ったかがわかれば、相手の性格の傾向がわかり、人間関係でどのように対処するのかを考える助けになります。

アドラー心理学から学ぶ|複雑な人間関係で良い人間関係を気づくには?

複雑な人間関係の中で、人は目的に向かって生きています。
時には人生で直面しなければならないさまざまな課題にぶち当たります。
普段なら臆病な人でも、ここ一番の場面で困難を克服する勇気を発揮することができます。

勇気を発揮するには?

アドラー心理学では、ここ一番の場面で困難を克服する力が勇気だと言っています。

1.尊敬・信頼に基づく人間関係をベースとすること

良い人間関係を築くには、お互いに「相手が・・・だったら」とか「・・・でありさえすれば」という条件を求めずに尊敬と信頼をすることが不可欠です。

2.パーソナリティの違いを認めること

「人は一人ひとり違う」のです。そのためには、パーソナリティの違いを認めることです。

3.短所は長所に置き換えること

パーソナルの違いを認めたとしても相手の短所は気になるものです。
例えば、

  • 短気
  • 暗い
  • 優柔不断
  • 忍耐力がない
  • 集中力がない
  • 威張っている
  • 頑固
  • 元気がない
  • ノーと言えない
  • 口下手
  • 自立心に欠ける
  • 生意気
  • おしゃべり

なんだか、この言葉を見ただけでも悪いイメージがします。

でも、アドラー心理学では短所をこのような長所として見ることを勧めています。

  • 短気 → ストレートに思いを表現できる
  • 暗い → 物静か
  • 優柔不断 → 安易な決断をしない
  • 忍耐力がない → 切り替えが早い
  • 集中力がない → 散漫力がある(マルチタスク)
  • 威張っている → 指導力がある
  • 頑固 → 信念が強い
  • 元気がない → 充電中
  • ノーと言えない→相手に寛容である
  • 口下手 → 聴き上手
  • 自立心に欠ける→フォロワーシップがある
  • 生意気 → 意思を通す
  • おしゃべり → 情報発信力がある

全くイメージが変わりました。
自分から見て短所に見えることも、もしかしたらその人にとっての個性や持ち味かもしれません。
アドラー心理学では、相手の短所を長所として置き換えると言っています。

4.時に直面化すること

人間関係においては、共通の目標に向けてホンネとホンネのやりとりをする「直面化」をしなければならない時があります。
この場合には、尊敬と信頼に基づき、パーソナリティの違いを認めながら行う必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
良い人間関係を築くには、信頼と尊敬に基づき、互いのパーソナリティの違いを認め合うということですね。

そして、相手に怒りをぶつけるというようなことをせず、怒りが出てきた場合にはその根底にある元となった感情にきちんと気づいて、それを相手に伝えるということですね。

これを別の言葉で言うならば、「相手にもっと関心を持つこと」「相手を援助すること」「相手を支配しないで生きるという覚悟を持つこと」ではないかと思います。

アドラーにはこんな言葉があります。
「健全な人は相手を変えようとはせず自分が変わる。不健全な人は相手を操作して変えようとする」

アドラー心理学は人に優しい心理学ではないかと思います。




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