先頭に立ってみんなをグイグイ引っ張っていく。
部下に対して指示をバンバン出して指導する。
普通私たちが思い描くリーダーとはこのようなものだと考えていますね。
このようなリーダー像を先入観として持っているために、自分はリーダーにふさわしくないと思っていたり、リーダーとなって負担に感じていたりするのではないでしょうか。
直属の上司からは「指示をもっと出して厳しく教育するように」と言われているものの、これまでの自分とあまりにも違う態度をとることに戸惑いを感じていることでしょう。
自分はそのようなタイプでないと感じるのなら、他のリーダー像を考えてみませんか。
チームの全体のバランスを保つように組織内で動いて、グループ全体に利益をもたらすリーダーも存在するのです。
それが「サーバント・リーダーシップ」という考え方です。
このリーダーは部下とのコミュニケーションを重視し、信頼関係を築くのが特徴です。
今回は、「リーダーの条件・柔軟性のあるサーバントリーダーで自分を活かす」という内容で、サーバントリーダーについてご紹介したいと思います。
リーダーの条件・サーバントリーダーとは
「指示をバンバン与えて部下を引っ張るのがリーダーである」というのは「リーダー像」の中の1つのタイプでしかありません。
このタイプにこだわってしまうと、自分らしさを発揮できず苦しむことがあります。
もともと自分にはないものを強制されるのですからつらいですよね。
ところであなたは、みんなの意見をきちんと聴いて調整を図ったり、困っている人の相談に乗ったりするタイプでしょうか。
そのような方に向いたリーダーシップがあります。サーバント・リーダーシップといわれるものです。
サーバント・リーダーシップとはアメリカのロバート・グリーンリーフが1970年に提唱したリーダーシップについての考え方です。
その考え方とは次の通りです。
『リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである』
従来型のリーダーとは、一人のリーダーがトップに立ち、部下に指示や命令を与えて物事を推し進めるという形式でした。
しかし、サーバントリーダーとは、部下たちと組織内のビジョン・目標を共有しながら、権限ついては一部を部下に譲り渡すなど、組織内の支援者としての役割に徹するのです。
リーダーの条件・従来型のリーダーとサーバントリーダーの違い
では、従来型のリーダーとサーバントリーダーとの違いについて見ていきましょう。
従来型のリーダーシップの考え方
従来型のリーダーシップの考え方とは次の通りです。
1.リーダーのモチベーション
大きな権力の座につきたいという欲求
2.リーダーの重視すること
競争を勝ち抜き、自分が称賛されること
3.リーダーが部下に対する影響力
権力を使い部下を従わせる
4.リーダーのコミュニケーション方法
部下に指示・命令するのが中心
5.リーダーの業務遂行のあり方
自分自身の能力を磨いてきた中で得た自信をベースにして部下を指示する
6.リーダーの成長についての考え方
社内で上手に立ち回り、自分の地位を上げて成長する
7.リーダーの責任についての考え方
責任とは、失敗したときにその人を罰するためにある
従来型のリーダーとは、自分の権力を行使して、自分自身の利益や成長を追求する傾向があります。
リーダーの理想が高くて人の役に立つことをモチベーションとしていれば、組織全体のモチベーションも高まりますが、リーダーの利己的な思想から組織が運営されると、さまざまな問題が出てきます。
リーダーの「自分さえよければいいんだ」という思想は、部下の離反を起こします。
さらに職場のリーダーと部下との関係を地位と権限に基づいた、上下関係だと誤解している人が多いために、上司に対する反感も募るのですね。
サーバント・リーダーシップの考え
一方、サーバント・リーダーシップの考え方はどうでしょうか。
1.リーダのモチベーション
組織の地位に係わらず、他者に奉仕したいという欲求
2.リーダーの重視すること
皆が協力して目標を達成しようとする環境を目指す
皆がwin-winの関係になることを重視する
3.リーダーが部下に対する影響力
部下との信頼関係を築くことを重視する
部下の自主性を尊重して組織を動かす
4.リーダーのコミュニケーション方法
部下の話を否定せずによく聴くことが中心
5.リーダーの業務遂行のあり方
部下へは指示や命令でなく、対話による気づきと助言から自発的に行動することを目指す
部下と共に学び、よりよい仕事をする
6.リーダーの成長についての考え方
部下のやる気を大切に考え、個人と組織の両方が成長するよう、調和を図る
7.リーダーの責任についての考え方
責任を明確にすることで、失敗からも学べる環境を作る
自分だけでなく部下との信頼関係を大切にし、みんなと対話をしながら組織全体の利益・成長を目指すのが、サーバントリーダーなのです。
リーダーの条件・従来型とサーバントリーダーの大きな違い
従来型とサーバントリーダーの大きな違いとして、部下が失敗したときの違いがあります。
従来型のリーダーであれば、まず本人を叱責し、同じ失敗を繰り返さないように仕事のやり方をリーダーが提示して、部下を指導します。
つまり上から下への命令というかたちですね。
一方、サーバントリーダーは、まず失敗をした本人との話し合いを先に行います。
話し合いの中で一緒に失敗の原因を探り、同じ失敗を起こさせない環境づくりを共に考えるのです。
サーバントリーダーの方法ですと、効果が出るまで時間がかかるという欠点があります。
しかし、部下との話し合いで解決策を出すので本人も納得する解決策であり、このような話し合いを通じて組織の結束を強めることができます。
リーダーの条件・サーバントリーダーシップの利点
サーバントリーダシップの利点についても見ていきましょう。
1.顧客本位の組織運営になる
従来型の組織運営ですと、部下はリーダーの顔色をうかがいながら仕事を進めていました。
その結果、顧客よりリーダーを優先していました。
サーバントリーダーシップでは、リーダーの責任は、部下を育て、部下が働きやすい環境づくりを目指すことなので、部下はリーダーに対して気兼ねすることなく、安心して顧客のニーズに応えることができるようになります。
2.職場の倫理観・価値観と、個人の生き方や組織の目的が一体になる
サーバント・リーダーシップでは、職場が同じこころざしや倫理観を持った人たちの共同体になります。
そのため職場全員の人たちが、自分の望む成長を、仕事を通して実現することができるようになります。
3.モラルの高い組織になる
奉仕による成長を仕事を通して実現できるため、モラルの高い組織になります。
会社や組織、リーダーに対する不信感が取り除かれます。
組織や自分の仕事にやりがいを感じた社員が生まれ、仕事に対してさらに情熱をもってあたるようになります。
リーダーの条件・サーバントリーダーの10の特性
サーバントリーダーの特徴は次の10の項目にまとめられます。
1.傾聴する
相手が望むことを引き出すために、まずは相手の話をしっかりと聴く。
相手にとって役立つことは何かを考える。
自分の心の声にも耳を傾ける。
2.共感する
相手の気持ちを、相手の立場に立って理解する態度。
前提として、人はもともと不完全なのだという考え方を持ち、どんなときでも相手を受け入れる
3.癒やす
相手の心についた傷を癒やし、本来の力を取り戻せるよう力を与える。
お互いに足りない部分は補い合える関係をつくる
4.気付く
ものごとをありのままに、歪んで見ないように心がけ、気付きを得る。
同時に相手に対しても、気付きを与えることができる
5.納得させる
相手の合意を得ながら、相手が納得できるように方向づける
自分の権限をひけらかさず、相手に服従することを強要しない
6.概念を持つ
大きな夢や将来の姿などの基本概念・基本思想を持っている。
それを相手に伝えることができる
7.先見力がある
いま起きている出来事と過去の出来事を照らし合わせ、将来起きるであろう出来事が予想できる
8.執事役に徹する
自分の利益よりもまず、相手に利益を与えることが喜びである。
一歩引くことを心得ている。
9.人々の成長に関与する
組織の仲間が成長することに深く関与できる
一人一人が持ち合わせている力や価値を知っている
10.コミュニティを作る
愛情と癒やしで満ちあふれていて、仲間が大きく成長できるコミュニティを作る
リーダーの条件・サーバントリーダーは女性向き?
サーバントリーダーの武器は、人間関係を構築できる力、相手のことを思い、相手の立場に経ってコミュニケーションができる能力です。
特に女性は、おしゃべりが好きで社交的、家族や友人など相手のことを思いやる気持ちを素直に表して行動に移せるという、もともとサーバントリーダーになれる資質が備わっています。
従来型のリーダーに当てはまらないからと、リーダーになるのを諦めるのも、敬遠するのも考えなくてよいのです。
サーバントリーダーシップモデルを参考して、自分の長所を生かしたリーダ像をイメージしてみることをオススメします。
自分らしさを活かして、自然体でリーダーの役割を果たしてみませんか。
「後輩にああしなさい、こうしなさい」と一方的に指示したり、気負ったりしなくても良いのです。
サーバントリーダーは、組織が最高のパフォーマンスを発揮するように、組織内のメンバーの能力を理解することです。
そして、それぞれのメンバーがレベルアップできるような役割分担や権限移譲をするのが、サーバントリーダーの役割です。
まとめ・リーダーの条件・柔軟性のあるサーバントリーダーで自分を生かす
いかがでしたでしょうか。
従来型の人をグイグイ引っ張っていくリーダーとは異なるリーダー、サーバントリーダーについてご紹介してきました。
従来型のリーダーと自分の性格や価値との違いに戸惑いを感じているなら、組織の支援者に徹するリーダーを目指す方向で考えてみるのがいいと思います。
今後も多様性や個人を尊重するような社会のあり方は、進んでいくと考えられます。
ですから柔軟性のあるサーバントリーダーは今後ますます評価されてくるでしょう。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
心理学は毎日を生きる知恵・心の波を穏やかに
リーダー像と心理学は関係ないと思われるかもしれませんね。
しかし、サーバントリーダーの場合は、相手の立場を考えるという点で、相手の心理に立ち入ることになりますから、心理学の出番が出てくるのです。
特に、サーバントリーダーの特徴である、「傾聴」「共感」「気付き」「概念」などの言葉は心理学のキーワードです。
さらにこの考え方を推し進めていくと、これまでのリーダー像のこだわりをなくせば、誰でもリーダーになれるということですね。
もし、あなたにリーダーになるチャンスがきたら是非取り組んでいただきたいと思います。
私のメンターは「自分のことだけ考える人でなく、他人に与える人になりましょう」と話しています。
さらに、人間は自分のために働いて金銭的にも社会的にも成功しても、決して満足しないこと、それはどこまでいってもきりがないこと、他者の役に立つこと、他鞘から喜ばれることが大切だと話しています。
サーバントリーダーシップも同じことでないかなと思います。