私たちは、仕事や人生の中で、いろいろな課題に直面してネガティブに感じることがあります。
それは、私たちの脳の中には、苦手意識やネガティブな感情や思考、自分の可能性を制限する思い込みというプログラムがあって、それがネガティブな感情や思考、思い込みを起こしていると考えられています。
このネガティブ感情や思考、思い込みをコントロールできれば、私たちの仕事や人生の中で直面する課題によりポジティブに対応できますね。
実践的な心理学であり、脳の取扱説明書と呼ばれているNLP(神経言語プログラム)は、「サブモダリティチェンジ」を学ぶことで、苦手意識やネガティブな感情や思考、自分の可能性を制限する思い込みを変化させることができると紹介しています。
ただ、「サブモダリティチェンジ」という専門的な言葉が少しとっつきにくいので、ここでは、「サブモダリティチェンジ」という言葉をできるだけ使わず、ネガティブ感情や思考をコントロールする実践的な方法が、私たちの仕事や人生でどのように応用できるのかについて、基本的な活用例をご紹介します。
NLPとは、Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)の略で、1970年代のアメリカで生まれた心理学です。当初、3人の天才的セラピスト(催眠療法のミルトン・エリクソン、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、家族療法のバージニア・サティア)の治療法を徹底的に研究することで生まれました。
さらに脳科学なども取り入れ、卓越したセラピーのスキルとして体系化されたNLPは、セラピーだけでなく、トップアスリートや政治家、ビジネスマン、会社員などにも広く学ばれ、効果の高い、「目標達成、問題解決、コミュニケーションのツール」として活用されるようになっています。
1.ネガティブ感情や思考をコントロールする・人の五感と人独自の判断や感じ方
ネガティブ感情や思考をコントロールする話の前に、私たちの身体の仕組みについてみてみましょう。
私たちは「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」の五感を持っています。
私たちが外部の出来事を認識するときには、「今日の天気は晴れだ」「部屋で音楽が静かに流れている」「氷に触ると冷たい」「砂糖をなめたら甘い」「すてきな香水の匂いがする」といった五感を使って認識します。
記憶という脳の内部の情報を処理するときにもこの五感を使って処理しているとNLPでは考えています。
例えば「楽しかった出来事」を思い出しているときには、頭の中では、楽しかったときの映像が見えていたり、音や誰かの声が聞こえていたり、うきうきするような身体の感覚を感じていたりします。
逆に「辛かった出来事」を思い出しているときには、頭の中では、そのときの辛い映像や音、また胸のあたりがぎゅっと締め付けられたり、頭が重くなったりする身体の感覚が生まれます。
人にはその人独自の判断や感じ方が、記憶された出来事や人に対して生まるようになっています。
判断や感じ方には、感情はもちろん「好き」や「嫌い」、「得意」や「苦手」、「やりたい」や「やりたくない」、また「できる」や「できない」といった思い込みなども入ってきます。
2.ネガティブ感情や思考をコントロールする・五感を変えるサブモダリティチェンジ
ネガティブ感情や思考をコントロールすることを理解するために、五感の中の視覚が、見え方が変わるとと感じ方の違いがどのようになるのか確認してみましょう。
この写真を見た時の、あなたの印象や感じ方はどうですか?
笑ってうれしそうな写真です。「やった!」とか言っているように見えますね。
この写真をカラーから「モノクロ」に変えてみましょう。
カラーとモノクロでは感じ方に違いがあることに気がつきませんか?
モノクロ写真は、「喜びが消えて色あせた」感じがすると思います。
さらに「大きさ」を小さくしてみましょう。
両方でどちらが喜びがあふれているか印象や感覚を比較してみたら、明らかに「大きい方」ですね。
「大きさ」の違いでまったく違う感じ方がします。
つまり、私たちは過去の記憶を思い出す時に、「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」という五感の質を変化させて想起させることで、その人や物事に対する「印象や感じ方」を変えてしまうことができるということです。
「印象や感じ方」はイメージでしかないので、頭の中で自由に編集できるのです。
これは「五感の質」を変えることでできます。
「五感の質の変更」のことをNLPでは「サブモダリティチェンジ」と言います。
さて、ネガティブ感情や思考を生み出すこのような場合はどうでしょうか?
このように機嫌の悪い人と対応しなければならない時は「嫌だなぁ」という気持ちとともに、映像がこのように浮かんでいるとします。
この見たままの情報(視覚)をそのままにしておくと、感じ方は「不安」「緊張」「焦り」、人にとっては「怒り」を感じることになり、生産性のある対応ができない状態、つまり【気になる】状態になります。
この見たままの情報を先ほどのように「モノクロ、大きさ、場所」を変えてみましょう。
ほとんどの場合、このような想起の仕方をすると、最初の時よりは気にならなくなりますね。
「思い出し方を変える」「想起する仕方を変える」ことによって、苦手意識を克服できたり、「行き詰っている状態」を「やる気が出る状態」にしたり、「モヤモヤ」「ゴチャゴチャした」状態を「スッキリ」した状態にすることができます。
ネガティブ感情や思考をコントロールする方法で問題を解決
ネガティブ感情や思考をコントロールする方法を活用することによって、次のような問題解決ができるようになります。
-
- 苦手な上司とのコミュニケーションがスムーズになる
- 人前で話すときのあがり症や緊張しやすいパターンを改善できる
- 許せなかった人を許すことができ、自分自身を取り戻すことができる
- ダイエットの大敵、ケーキやチョコ、炭水化物を食べなくても平気になる
- 「できない」と思っていた目標を「できる」という確信レベルまで高めることができる
- 喪失感を自分の活力のもとに変えることができる
- 行き詰ってなかなか着手できない仕事や片付けなどにやる気が起こる
3.ネガティブ感情や思考をコントロールする・視覚情報、聴覚情報、身体感覚の詳細な要素
私たちの脳の中では、記憶が視覚情報、聴覚情報、身体感覚の詳細な「要素」と貼りついています。
五感とは「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」のことで、NLPでは以下のように3つに分けています。
- Visual:視覚情報
- Auditory:聴覚情報
- Kinesthetic:身体感覚(触覚、味覚、嗅覚を含む)
その人の判断や感じ方を決めていく「視覚情報」、「聴覚情報」、「身体感覚情報」の要素にはどのような項目があるのかを見てみましょう。
1.V:視覚情報の項目
視覚情報の要素には、次のものがあります。
-
-
- 色 :モノクロか、カラーか
- 明るさ:明るいか、暗いか
- 距離 :近いか、遠いか
- 位置 :上下、左右、どの位置かどの方向か
- ピント1:合っているか、ぼやけているか
- ピント2:変化するか、安定しているか
- 枠 :枠がついているか、パノラマか
- 動画・静止画:動画か、静止画か
- 動画のスピード:速い、通常、遅い
- コントラスト :強いか、弱いか
- 立体・平面 :枠はあるか、パノラマか
- 映像の枚数 :何枚か、入れ替わるか
- 角度: どの角度から見ているか
-
以上のような項目を調整することで、「苦手意識がなくなっている」、「嫌悪感がない」、「やる気になっている」といった望ましい心の状態を作っていきます。
2.A:聴覚情報の項目
聴覚情報の項目には、以下のものがあります。
-
-
- 聞こえる場所:どこから聞こえるか
- 聞こえる方向:どの方向から聞こえるか
- 内・外 :内部から聞こえるか、外から聞こえるか
- うるさい・静か :うるさい音か、静かな音か
- スピード :速いか、遅いか
- ピッチ :高いか、低いか
- 音色:どんな音色か
- 音質: どんな音質か
- 途切れる:音が途切れるか、滑らかか
- リズム:どんなリズムか
- 長さ: 長い、短い
-
聴覚の情報を小さくする、といった調整をすることで「苦手意識がなくなっている」、「嫌悪感がない」という状態を作っていきます。
逆に大きくする、といった調整で「やる気になっている」といった望ましい心の状態を作っていきます。
3.K:身体感覚情報の項目
身体感覚情報の項目には、次のものがあります。
- 感じる場所:どこでそれを感じているか
- 大きさ:どれぐらいの大きさか
- 形:どんな形をしているか
- 強さ: 強度はどれくらいか
- 一定している:一定しているか、ばらばらか
- 動き: 動きがあるか、どんな動きをしているか
- 圧力: どれぐらいの圧力があるか
- 温度: どれぐらい温かいか
- 重さ: 重たさはどうか
- バイブレーション:揺れているか、揺れていないか
これらの項目を調整することで、「苦手意識がなくなっている」、「嫌悪感がない」、「やる気になっている」といった望ましい心の状態を作っていきます。
4.ネガティブ感情や思考をコントロールする・項目の調整の目安
視覚、聴覚、身体感覚の項目を調整することによって、ネガティブ感情や思考、滞っている状態を望ましい状態に変化させることができます。ここではこの項目の調整の目安を見てみましょう。
【視覚情報】
- 視覚情報については、イメージとして、パソコン画面を見て、目が疲れないように、色合いやコントラスト、明るさなどを調整して適切にしていくような感じです。
- スマホの写真のアプリで画像を修正したり、写真の大きさや配置する場所などを変えてみるようなイメージでの調整も有効だそうです。
- 一般的に見ると「場所」「大きさ」「自分の姿」の変化させるほうが、影響は大きい傾向にあるそうです。(ただし、人それぞれの脳の処理の仕方によって異なります)
【聴覚情報】
- 聴覚情報は、イメージとして、音楽の世界で使用するミキサーのようにつまみで高音や低音などを調整し、ちょうどいい、自分の心地よい音に調整するような感じです。
- 聞こえてくる音や誰かの声をアニメのキャラクターの声をイメージして聞いてみるとか、頭の奥で聞こえているのであれば、やりにくいかもしれませんが、試しに左足の小指の爪先から聞いてみると感じ方が変わるのだそうです。
【身体感覚情報】
- 身体感覚情報では、緊張や不安などは体の部位でいえば、上半身に自分の重心が上がっている場合が多いので、その重心を丹田(オヘソの下)に持っていくというイメージを持ちます。このことで落ち着きを取り戻すことができたりします。
- その感じている感覚を形にして表してみて、例えば「☆」の形から「○」にしてみたり、自分の体の外に出してみることも有効だそうです。
このように視覚、聴覚、身体感覚の項目を複数組み合わせて調整しながら、その人にとって適切な状態にしていくことができるのだそうです。
いい体験のことを思い出すとき、そこには視覚、聴覚、身体感覚の情報があります。
さらに、「あれは得意だ!」と得意なことを考えるときにも、そこには視覚、聴覚、身体感覚の情報がありますし、「あれは苦手だなぁ・・・」と苦手なことを考えるときには、そこには視覚、聴覚、身体感覚の情報があります。
つまり、視覚、聴覚、身体感覚の情報を【どのように】見ているのか、【どのように】聞いているのか、そして【どのように】感じているのかに気づくことです。
まとめ・ネガティブ感情や思考をコントロール・サブモダリティチェンジ
私たちは、視覚、聴覚、身体感覚の情報を【どのように】見ているのか、【どのように】聞いているのか、そして【どのように】感じているのかを構成する詳細な要素が、私たちの「苦手や得意」「好きや嫌い」といった私たちの判断や感じ方に影響を与えています。
サブモダリティチェンジでは、項目を詳細に特定しながら、写真のアプリで加工や編集をするように、またミキサーで音を調整してちょうどいい音にしていくのと同じように、編集や調整をしていくことで、自分のネガティブ感情や思考をポジティブに変えていけます。
どのようにそのことを思い出しているかを認識し、その想起の仕方を変えれば、ネガティブ感情や思い込みをコントロールすることができるのです。