人はたった一人では生きていくことができません。
私たちは、社会をつくり組織の中で他者と共に生きているからです。
ですから、他者と結びついて生きていることを忘れないように、日々心がけていくことが大事だと思います。
利己的になり他者を敵対視すれば争いになります。
穏やかで安心できる生活を送るようにするためには、安心できる良い人間関係を築く必要があります。
アドラー心理学を初めて学んでみると、安心できる良い人間関係をつくるためにはどうしたら良いのかがわかります。
今回は、人間関係の築き方についてのエッセンスを書いていこうと思います。
「人は心の中が矛盾対立する生き物ではなく、一人ひとりかけがえのない、分割不能な存在である」
アドラー心理学ではこのように言っています。
これはアドラー心理学の「全体論」という理論です。
心の中にある理性と感情は一見すると矛盾した方向をたどっているように思われますが実際はそうではありません。
感情と理性はお互いに補い合い協力する関係です。
まず感情の役割について説明します。
感情は次のように2つに分けられます
では、それぞれを説明していきましょう。
感情と身体との関連については、例として、よく眠った後の爽快感や、風邪を引いた時の倦怠感があげられます。体調によって出てくる感情に違いが出てきます。
感情と思考の関連については、「怒り」という感情が例にしてみるとわかります。
待合わせに遅れてきた友人にムッとした場合がそうです。
ムッとした理由の根底には「約束した時間は守るべき」という「・・・すべき」「・・・しなければならない」という思考や信念があるからです。
感情と行動の関連については、やらないといけないことを先延ばししていると、いよいよ期日が迫ってくるという段階で焦りの感情が出てきます。
人は、多くの行動を考えてから行動に移すように、「理性的回路」を通して行なっています。
しかし、「理性的回路」は行動に移るまでに停滞気味になりやすいのです。
そういった時に、思考・認知の領域から指令が出て、感情・感覚から「非理性的回路」を通って一気に行動してしまうことがあります。
言うことを聞かない子供を怒りに任せて叩いてしまった、とか、ひどい悪口を言われたので、とっさに物を投げつけた、などという場合ですね。
先ほどの例でもあげましたが、「怒り」という感情が一番厄介です。
怒りの感情が出るのには、
という次の4つの目的があるからです。
この怒りがでる根底には人には「・・・であるべき」「・・・しなけらばならない」という思考や信念があるからです。
その人の思考や信念に沿わない出来事が起こった時、人は「傷つき」「寂しさ」「悲しみ」「心配」「落胆」といった最初の感情(一次感情)が生まれます。
この一次感情が「怒り」に変換されて感情が出てしまうのです。
ここで怒りを相手にぶつけたらどうなるでしょうか?
相手が反発して、怒りをぶつけ返してくることもあるでしょう。
もちろん人間関係はうまくいきません。
でも、最初に出てきた一次感情を相手にきちんと話したら、このようなことにはならないかもしれません。
日常で「怒り」が出てきた時には、なぜ怒りが出てきたのか、その根底にある一次感情に気づかないといけません。
ライフスタイルとは、アドラー心理学では次のことを言います。
その人特有のものの考え方である「思考」、喜怒哀楽に代表される「感情」、思考・感情をもとにした行動の特性、「自分についての信念」「自分の周りの世界に対する信念」を総合したものです。
わかりやすく言えば「性格」のことですね。
アドラー心理学では、ライフスタイルは影響を与える要因と決定する要因とがあり、次のように説明しています。
アドラー心理学では、人のライフスタイルが固まる年齢は8〜10歳ぐらいとみています
人間関係においては、相手の性格の傾向を知って、それに合わせて対応することで人間関係をスムーズに保つことができます。
アドラー心理学では「きょうだいの誕生順位」で性格の傾向を次のように説明しています。
「きょうだいの誕生順位」でわかる性格の傾向に関する本は、最近よく書店で見かけられ、話題になっていますね。
このように、相手がきょうだいの中でどのような誕生順位で育ったかがわかれば、相手の性格の傾向がわかり、人間関係でどのように対処するのかを考える助けになります。
複雑な人間関係の中で、人は目的に向かって生きています。
時には人生で直面しなければならないさまざまな課題にぶち当たります。
普段なら臆病な人でも、ここ一番の場面で困難を克服する勇気を発揮することができます。
アドラー心理学では、ここ一番の場面で困難を克服する力が勇気だと言っています。
良い人間関係を築くには、お互いに「相手が・・・だったら」とか「・・・でありさえすれば」という条件を求めずに尊敬と信頼をすることが不可欠です。
「人は一人ひとり違う」のです。そのためには、パーソナリティの違いを認めることです。
パーソナルの違いを認めたとしても相手の短所は気になるものです。
例えば、
なんだか、この言葉を見ただけでも悪いイメージがします。
でも、アドラー心理学では短所をこのような長所として見ることを勧めています。
全くイメージが変わりました。
自分から見て短所に見えることも、もしかしたらその人にとっての個性や持ち味かもしれません。
アドラー心理学では、相手の短所を長所として置き換えると言っています。
人間関係においては、共通の目標に向けてホンネとホンネのやりとりをする「直面化」をしなければならない時があります。
この場合には、尊敬と信頼に基づき、パーソナリティの違いを認めながら行う必要があります。
いかがでしたでしょうか。
良い人間関係を築くには、信頼と尊敬に基づき、互いのパーソナリティの違いを認め合うということですね。
そして、相手に怒りをぶつけるというようなことをせず、怒りが出てきた場合にはその根底にある元となった感情にきちんと気づいて、それを相手に伝えるということですね。
これを別の言葉で言うならば、「相手にもっと関心を持つこと」「相手を援助すること」「相手を支配しないで生きるという覚悟を持つこと」ではないかと思います。
アドラーにはこんな言葉があります。
「健全な人は相手を変えようとはせず自分が変わる。不健全な人は相手を操作して変えようとする」
アドラー心理学は人に優しい心理学ではないかと思います。
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