私たちが人生を変えるにも、習慣を変えるにも、環境や習慣に支配されるのではなく、自ら環境や習慣に働きかけて、私たちが環境や習慣を支配できるようになることが大事です。
そのためには、アドラー心理学を使って私たちの環境や習慣がどのようになっているかを気づき、どのように対処するかを考え、最後に実行していく必要があります。
今回は「習慣」について、アドラー心理学で学んだことのエッセンスを書いていきたいと思います。
習慣の説明に入る前に、まず私たちがどのような環境や習慣にいるのかを理解する必要があります。
それをきちんと理解するためには、まず最初に、私たちは外界の出来事を自分だけのメガネを通してものをみていることに気づく必要があります。
アドラー心理学では「人間は自分流の主観的な意味づけを通して物事を把握する」という「認知論」が基礎論としてあります。
人は出来事に対して客観的にありのままを受け取るのではなく、外界の出来事を自分特有のものの見方、認知の仕方を使って主観的・個人的な現実として印象づけて受け取っています。
アドラーは「人間は意味の領域を生きている。われわれは状況をそれ自体として経験することはない。いつも人間いとって意味のあるものだけを経験するのである」と本の中で記述していて、続けてこのように言っています。
「人間は意味を離れて生きることはできない。われわれは現実を常にわれわれがそれに与える意味を通じて経験するのである」
ということは、10人が同じ場所にいて共通の体験をしたとしても、受け止め方が10通りあって、十人十色になるということです。
10人それぞれが別々の受け止め方をします。
ある人は「悲惨だった」と言い、またある人は「貴重な体験だった」と言うこともあります。
また別のある人は「悲惨でも、貴重でもなく、ごく普通の出来事だった」と言うこともあります。
それぞれの人が、共通の体験を、その人なりの体験や知識をもとにして独特の解釈を加えて、違った受け止め方をします。
主観的な意味づけをするその人特有のものの見方・考え方を、アドラー心理学では、「私的論理(プライベートロジック)」と呼びます。
時に、この私的論理が非建設的(さらには破壊的)に働くことによって、自分自身も生きにくくなり、周囲との摩擦も生じてしまうことがあります。
この歪んだ意味づけの思考、自滅的な認知のことを「ベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)」と、アドラー心理学では呼びます。
ベイシックミステイクスの代表的なものは「決めつけ」「誇張」「見落とし」「過度の一般化」「誤った価値観」の5つがあげられます。
自分を理解するためにも、他人を理解するためにも、その人特有の思い込みのパターンを知ることが重要です。
他人を理解する時に有効なのが、出来事をその人がどのように記憶しているのかを知ることです。その人を知る手がかりとなります。
アドラーは「人は記憶をつくる」という言葉を残しています。
人の記憶の曖昧さと、人それぞれの記憶の保持の仕方を知るというのが、アドラー心理学の認知論の考え方です。
アドラー心理学では思い込みの世界から離れるために必要なのが「共感」だと言っています。
共感とは、相手の関心・考え方・感情や置かれている状況などに関心を持つことです。
「共感」と比較されるのが「同情」です。
アドラー心理学では共感と同情が対人関係において与える影響が違ってくるために厳密に分けています。
対人関係において、相手や状況に対して共感レベルであるならば安全なのですが、同情レベルに入ってしまうと、好ましくない作用が現れるからです。
その好ましくない作用とは次のことです。
次にあげるような経験は誰にもあることではないかと思います。
同情モードに入って我を忘れてしまい、自分勝手な思い込みで判断して、相手の望まないことをしてしまい、結果として相手に迷惑をかけ、さらに後になって自分も後悔する。
このことは分解してみると次のようになります。、
さらに、共感を保ち続けるには、尊敬・信頼だけでなく、時に相手に対する「忍耐」や「寛容」さも求められます。
「忍耐」について言えば、例えば、相手が自分のことを理解できなくても繰り返し「忍耐」強く説得するとか、「寛容さ」について言えば、相手の考えが自分の考えに沿っていなくても、反発するのではなく相手を受け入れる「寛容さ」を持つ、といったことです。
豊かな人間関係を保つためには「同情に流れることのない共感」が大事です。
そのためには次の3つのトレーニングの方法を取るのがオススメです。
自分の振る舞いや相手とのやりとりをテレビモニターでチェックするように、自分の中で同情モードに入りやすくなる、いつも出てくるパターンが2つから3つまとめて出てくることがありますので、その瞬間を「あっ、やっちゃってるな!」と捕らえましょう。気がつきましょう。
この時、同情モードの危険ゾーンに入りそうな一歩手前で食い止めることです。
私たちは誰もが自分だけのメガネを通して物事をみています。
物事を見る「メガネ」は一人ひとり違った歪み方をしていて同じでありません。冷静になって、自分の私的論理で作り上げたストーリーから一歩引いて、相手の私的論理でストーリを作り直してみましょう。自分の私的論理から離れてみて、よく観察して見ると、自分が考えていたことと違うことを、思いがけない視点から見つけることがあります。
自分より高い位置に立って、自分自身も含めた全体を見渡すようにして、客観的に物事を見てみましょう。
これらの3つのトレーニングは、毎日の生活で常に意識して行うことが肝心だと思います。
急にやろうと思ってもできることではありません。
ではどのようにしていけばいいでしょうか?
それは習慣化にあります。
習慣化とは自分の中に新しい何かを身につけることです。
新しい習慣を身につけるにはまず、習慣化における次の3つのサイクルを理解することが重要です。
この3つのサイクルは次のように説明されます。
「自覚的器用さ」:さらに継続して新しいことに取り組んでいると、体になじんできて、違和感を感じなくなります。
ここまでくれば、後は継続が可能になります。
「習慣」とは「無自覚的器用さを伴ったパターン化した行動」を言います。
例えば、お酒、タバコ、早食い、衝動買い、夜更かし、朝寝坊など、本人が気づかずに同じような行動を繰り返し、繰り返しやってしまうことです。
習慣になっているのには次のような条件が整っているからです。
あるきっかけがもとになって、新しい取り組みをしようと「決断」した時、「決断」をしたものの、不快感や違和感だらけの「自覚的不器用さ」がやって来ます。
いちいち自分を自覚的に見張っていないとならず、不器用な自分を奮い立たせながら、今までのパターンを克服するためにチャレンジし続けなければなりません。
自分を変えることは、簡単なことではありません。
これまで慣れ親しんだ快適な場所を離れ、新たな場所に移ることは、不快だったり、違和感があるからです。
多くの人は「こんなに不快で違和感があるのなら、慣れ親しんだ今までの快適な方がいい」と、従らの快適な場所に戻ってしまいます。
自分の現在の習慣を変えたいと強く必要性を感じ、具体的なスキルを持ち、困難を克服する活力である勇気を持っている人は、途中経過に必ず通る「不快で違和感のある状況」があることを敢えて承知で新しいことに取り組もうとします。
それを突き抜けていくと、今までできなかったことができるようになって喜びを感じ、自信と勇気が生まれてきます。
さらに、できることが当たり前になってくると、また新たなことにチャレンジする意欲とゆとりが生まれ、次々と取り組んでいくことで行動面だけでなく、感情面でも思考面でも人生が豊かになってくるのです。
ここからはアドラー心理学から離れますが、習慣化について私がある方から教わった方法がありますので最後にそれを書いていきます。
習慣にしてしまうためには「決断→実行→継続」という一連の流れになるというのは先ほど説明した通りです。
「決断」したら「即実行」です。見切り発車でも構いません。
そして「決断」したら実行することを紙に書いて見えるところに貼っておくことです。
どうしても人間は忘れてしまいます。
覚えたことを人間は次の日には75%も忘れてしまいます。
紙に書いて貼っておけば、自分のやるべきことをいつでも思い出します。
また、忘れることに関していえば、毎日やることが多すぎます。
本当にやるべきことを忘れてしまいます。
自分の一日の行動をきちんと見て、やらなくても良いことをしていて時間を無駄に使っていないかを調べて、無駄なものは削ぎ落とす必要があります。
いわゆる断捨離です。
さらに、自分の実行することを周囲のみんなに話しておくことです。
話しておけば、周囲の人が気がついて、やらなかったことを指摘してくれます。
そして、断念してしまうことも考えて、やらなかった時には、自分に対する罰ゲームを課しても良いかもしれません。
一番大事なのが、途中断念しそうになっても、休むことがあっても、始めは三日坊主になってしまっても構わないので、諦めずに続けることです。
いかがでしたでしょうか。
アドラー心理学は、私たちが環境や習慣に支配されているのではなく、自ら環境や習慣に働きかけそれらを私たちが支配できることを教えてくれています。
アドラー心理学で人生を変えて、習慣を変えて、自分を成長させていきましょう。
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